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シンデレラパロディ2話。



+ + + + + + + + + +
風通しの良いバルコニーは、とても清々しかった。
室内の贅を尽くした煌びやかなシャンデリアより、二人きりで見上げるよく晴れた星空の方が余程尊く美しい。
眩しい月灯りが、淡く愛しい黄金の肌を照らした。

「でも良かった。ルルーシュが来てくれてっ!」

「ああ。まあ、もともとその予定だったしな」

「ナナリーから君が来ないって聞いて、パーティーサボっちゃおうかと思ってたんだけど、我慢して本当に良かった」

二人して会場からなかばボイコットしたも同然だったが、それについてはスザクは意に介さない様子。
どこまでも自分勝手な幼なじみに呆れて溜め息をこぼしつつ、ルルーシュはスザクが凭れ掛かるバルコニーの手摺に並ぶようにして、ひょいと腰掛けた。

「大袈裟だな。…ユフィだって来ていたんだろう?」

「うん。なんかね、姉妹揃いですごく綺麗なドレス来てたよ。可愛かった」

あはは、と笑うスザクに、ルルーシュはぴくりとこめかみが引きつった。
桃色の姫君がスザクに会いに来ると知ったから、わざわざ行くつもりもない会合に来たというのに。
言うにことかいて自分の前でその姫を誉めるとは、一体どんな神経をしているのかと。
ルルーシュは相手の頭を殴りたいような気にかられる。

「…悪かったな。ひらひらした可愛らしいドレスなんて着てこなくて」

しかし、久しぶりのスザクとの邂逅に、ルルーシュ自ら水を差せるわけもなく。
結局目を逸らして、不機嫌を訴えるように拗ねてみせるのが精一杯だ。

「る、ルルーシュだって可愛いよっ!?今日だって、まさか白で来るとは思ってなかったから……えっと、すごく…びっくりした」

皮肉を込めた言葉に気づいて慌てて取り繕う言い訳が、熱に浮かされてどんどん柔らかくなる。

「それにあんまり綺麗だから、みんな注目しちゃって…なんかシンデレラみたいだったね」

「…っ!だ、黙れ!!」

「ふがっ」

そんなの自分が聞くに耐えなくて、ルルーシュは彼の口を塞いだ。

「んんーんー?」

「俺が許可するまでおまえは喋るな!!」

「う゛う゛ー……。ん!」

「…ひっ、あっ!?」

ばっと、思わず手を離す。

「な、なっ、お、おま…!!」

「もう、苦しいよ!ルルーシュ」

「だた、だだからといって舐めるなっ!」

生々しく感触の残る右手を握り締めてスザクを睨み付けた。
だというのに、ふにゃりと相好を崩して目の前の男は「美味しかったぁ」と、言うのだ。

「こ、この馬鹿が!!」

「あっは、真っ赤だ。可愛い。どこのお姫様より、ルルーシュが一番可愛いよっ」

「~~~~っ!!!!」

可愛い、だなんて不名誉極まりない。
それでも、心底楽しそうなスザクを見て許せてしまえそうになる自分は、きっと愚かなのだろうと、ルルーシュは思う。
にこり、と傾げた首に乗る微笑に、どうしてこうもほだされてしまうのだろうか。

「大体、本物のシンデレラならガラスの靴が必要だろ。俺はドレスも靴も穿いていない」

だから女扱いをするな、と強く視線で訴える。
スザクはきょとんと目を見開いてから、おかしそうにくすくすと控えめに笑い出した。

「…ねえルルーシュ、知ってる?」

「何をだ」

「心理学的に、靴が何を指しているか」

その時、行儀悪くもバルコニーに腰掛け腕で抱えていた右足を、スザクの長い指が撫であげた。

「靴は、確か……」

特に手を払うわけでもなく、ルルーシュは記憶を辿る。
そしてほどなくしてその意味に至った時、ルルーシュはさあっと色をなくした。
顔色でルルーシュが理解したことを知れば、スザクはことさら微笑を深く刻む。

「ね?ガラスの靴なんて、要らないよ」

「ま、待て!俺は十二時までに戻らないとっ」

ナナリーとの約束があるから。
とも、最後まで言わせてもらえない。

「十二時で解ける魔法なんて、ルルーシュにはないだろう?」

優しく優しく囁いてくるくせに、否やは決して言わせない口調。

「待て…っ」

「な・い・よ。だって会えるのだっていつ以来振り?しかもルルーシュ、今日来ない気だったって?僕がどれだけ楽しみにしてたか………」

ルルーシュが好きな新緑色の瞳が、今、眼前に。

「わかってた?」

しかしちっとも笑ってない。

背に回された手が不穏に這い始める。
「わ、悪かった…!次はちゃんと会いに来るっ。だから今日は帰…っ」

だって。
ナナリーとの。
約束が。

ここで負ければ妹との約束は果たせない。
どんなに世界が許そうと、それはルルーシュにとって破ることなど有り得ない律。

「あ、大丈夫。ルルーシュがこっち泊まるって、ナナリーに言っておいたから」
しかし、その一言で視界が暗転した。

――――ガラスの靴は君自身だもの。

耳よりもっと奥に注ぐ吐息。
抱きすくめるのも、なんて手際の良さなのか。
この場で暴れでもすれば、腰掛けたバルコニーから真っ逆様ではないか。
そう、逃げ道はないのだ。
自分にしか合わない靴を、王子に差し出されてしまったら、もう。

「…っ!!熱した鉄の靴は、絶対っ、おまえに穿かせてやるからな……!」

「うわ、怖いなぁ」

十二時を告げる鐘が、今、夜空に荘厳に響く。
解ける魔法もないまま、密やかに笑う声に、ルルーシュはすべてをいだかれた。






























「大好きだよ、僕のシンデレラ」









































happy end・・・?

































*あとがき*

靴は女性器。
それを穿く脚は男性器。
要するに靴を穿かせる行為というのは、そういう意味。…らしい。

…何はともあれ、王子様は幸せです。
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